雪道の運転と、ラジオ

冬の取材は、移動が、いちばんの難所だ。

特に、雪国の山道。
夏なら何でもない道が、冬は一変する。
路面は凍り、視界は白く煙り、対向車もほとんど来ない。
こういう道を、ひとりで延々と運転していると、
だんだん、自分が世界にただひとり取り残されたような気分になってくる。

そういうとき、ラジオだけが、頼りだ。

カーラジオから流れてくる、どうでもいい話。
地元局の、聞いたこともない番組。
パーソナリティの、のんびりした声。
内容なんて、ほとんど聞いていない。
ただ、人の声がしている、ということが、ありがたい。

雪の壁にはさまれた一本道を、人の声を連れて、進んでいく。

ときどき、電波が悪くなって、声が途切れる。
ザーッという砂嵐のような音だけになる。
そうすると、急に、心細くなる。
たかがラジオなのに。

不思議なものだ。
誰かの声が、ただそこにある、というだけで、
人は、こんなにも安心するのだな、と思う。

ようやく宿に着いて、エンジンを切ると、
急に、しんとした静けさが、降りてくる。
その静けさが、嫌いではない。
嫌いではないが、少しだけ、こわい。

——というようなことを考えるのは、たぶん、運転で疲れているせいだ。
今日は、もう寝る。

コメント

タイトルとURLをコピーしました