夏の、何でもない一日

締切と締切の谷間に、ぽっかりと、何もない一日ができた。

こういう日は、たいてい、持て余す。
出かける気力もなく、かといって家事をする気にもなれず、
結局、冷たい麦茶を飲みながら、古い地図を眺めて過ごした。

エアコンの効いた部屋で、地図を広げて、
行ったことのない土地の、行ったことのない道を、指でなぞる。
ここを自転車で行ったら、何時間かかるだろう。
この峠を越えたら、どんな景色が見えるだろう。
そんなことを、ぼんやり考える。

実際に行くかどうかは、わからない。
たいていは、考えるだけで終わる。
でも、その「考えるだけ」の時間が、わりと幸せなのだ。

夕方になって、近所を少し散歩した。
セミがうるさい。子どもが、どこかではしゃいでいる。
ありふれた、夏の夕方だ。

何でもない一日だった。
でも、こういう日のことを、
あとで、妙に懐かしく思い出すことがある。

なぜだろう。
何も起きなかった日のほうが、
何かが起きた日より、記憶に残ったりするのは。

——と、何でもないことを、何でもなく書いて、今日はおしまい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました