古い地図と新しい地図を並べて、消えた地名を数える、という遊びをする。
遊び、というと語弊があるかもしれない。
れっきとした(?)、ぼくの研究の一環である。研究というほどでもないが。
市町村合併や、住居表示の変更で、
ここ数十年のあいだに、ものすごい数の地名が消えた。
「大字(おおあざ)」「小字(こあざ)」と呼ばれる、
集落より小さな単位の、土地そのものの名前。
これが、行政の都合で、どんどん整理されていった。
たとえば、ある土地が、昔は「狐塚」という小字だったとする。
それが、区画整理で「みどり町三丁目」になる。
すると、「狐塚」という名前は、地図から消える。
そこにかつて何があったのか——もしかしたら、本当に狐の塚があったのか、
そういう手がかりが、まるごと失われる。
名前が消えるというのは、記憶が消えるということだ。
もっとも、消えた名前は、完全に消えるわけではない。
古い地図に残っている。
古い登記簿に残っている。
お年寄りの記憶に残っている。
バス停の名前に、なぜか一つだけ残っていたりする。
だから、ぼくのような物好きが、それを拾い集めることができる。
パズルのピースを探すように、あちこちから、消えた名前を見つけ出す。
そして、ここには昔こういう名前があった、と、ひとり、確認する。
何の役に立つわけでもない。
ただ、消えてしまう前に、誰かが書き留めておかないと、
本当に、跡形もなくなってしまう気がして。
——たぶん、ぼくは、消えていくものが、放っておけないのだと思う。
昔からそうだ。

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