このところ、学生時代に読んだ本を、引っぱり出して読み返している。
地名の研究書や、民俗学の古い本だ。
当時はゼミの課題で、半ば義務で読んでいた。
正直、ちゃんと理解していたとは言いがたい。
それが、いま読み返すと、やけに面白い。
歳をとって読むと、本の見え方が変わる、とはよく言うけれど、
本当にそうだ。
当時はただの knowledge、暗記すべき事項にしか見えなかったものが、
いまは、その背後にある「人の営み」として、立ち上がってくる。
たとえば、ある本に、こんなことが書いてあった。
同じような地形には、同じような名前がつく。
沢、谷、崖、湿地。
人がその土地を見て、感じることは、時代や民族が違っても、案外似ている。
だから、遠く離れた土地に、よく似た意味の地名が、別々に生まれる。
学生のころは、ふうん、と思っただけだった。
いまは、これが、妙に心に残る。
別々の場所に、似たものがある。
それは、人間の感じ方が、根っこのところで共通しているからなのか。
それとも、もっと別の理由が、あるのか。
ゼミの教授が、まさにそれを研究していた。
「なぜ、似たものが、別々の場所にあるのか」。
あのころは、その問いの大きさが、わからなかった。
いまも、わかったとは言えない。
ただ、その問いの「底が見えない感じ」だけは、
当時より、ずっと、よくわかるようになった気がする。
本というのは、変わらないのに、読むたびに変わる。
不思議なものだ。

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