仕事の写真は、いちおう、それなりの機材で撮る。
依頼主に納品するものだから、当然だ。
でも、自分の覚え書き用には、ずっと同じ、古いコンパクトデジカメを使っている。
もう十年選手だ。さすがにあちこちガタがきていて、
たまに、変な色が出たり、妙なノイズが乗ったりする。
新しいのを買えばいいのに、と言われる。その通りだ。
でも、なんとなく、手放せない。
このカメラで撮った写真には、独特の「写り」がある。
最新のカメラの、隅々までくっきり写る画は、たしかに綺麗だけれど、
どこか、よそよそしい。
この古いカメラの、少し眠たいような、不確かな写りのほうが、
ぼくが廃村で感じている、あの「曖昧な感じ」に、近い気がする。
廃村というのは、はっきりしない場所だ。
ここに何があったのか、誰がいたのか、確かなことは、たいていわからない。
そういう場所を、くっきり写しすぎるのも、なんだか違う気がする。
——というのは、たぶん、ただの言い訳で、
本当は、新しい機械の使い方を覚えるのが、面倒なだけなのだけれど。
ともかく、当分は、この相棒で行くつもりだ。
壊れるまで、付き合ってもらう。

コメント